英語(結晶的知能)と、英会話(流動的知能)の違い
研修時の英会話講師との会話
講師: 担当している生徒さまで、文法の知識や 単語の意味を 多く知っているのに、英会話で 話すのが苦手な方がとても多いような気がします。 何故なんでしょうかね?
MPE: 一緒に考えてみましょう。 ところで 8x8 は?
講師: (瞬時に)64です。
MPE: 何でそんなに早く答えが出せるの?
講師: 小学生の時、算数で 九九を習ったからだと思います。
MPE: 九九 のように 暗記した知識は (1) 結晶性知能 (大脳基底核での作業)と言います。 次にノートに 54x72 と書いて計算してみてください。 答えは?
講師: (少し時間が経って)3,888 だと思います。
MPE: 54x72 は 九九を 縦書きの公式に当てはめて解きましたよね? これは (2) 情報処理機能 を用いたと言えます。 英単語や 文法は (1) 結晶性知能 で、(2) 情報処理機能を (3) 収斂 (convergence) させることで、TOEIC や センター試験は 高得点を取る事ができます。 これを * 左脳的作業 (前頭前皮質での作業)と呼びましょう。 次に 暗算で 73 x 56の答えがすぐに出ますか?
講師: 自信がありません。
MPE: 暗算が得意な人は、暗算を習慣化するためのトレーニングを行ない、 (4) * ワーキングメモリーの機能を 高めているのです。
* ワーキングメモリ(Working Memory): 認知心理学において、情報を一時的に保ちながら操作するための構造や過程を指す構成概念である。 作業記憶、作動記憶とも呼ばれる。
備考: 九九 のように 暗記した知識は 大脳基底核 で行われ、エネルギーを あまり要しませんが、前頭前皮質を用いて 言葉をつなぎ合わせる機会の多い 英会話は 多くのエネルギーを 用います。 脳のスタミナ不足は英会話上達の 阻害要因と言えるかもしれません。
ここまでのまとめ:
九九(1桁 x 1桁) の暗算 は (1) 結晶性知能
紙に計算式を 書いて行なう 計算は (2) 情報処理機能 + (3) 収斂
暗算は (1) 結晶性知能 + (4) ワーキングメモリー
掛け算の場合 九九が基本ですから、基本は81通りで 全て暗記できます。 また、九九ができれば、足し算、引き算も出来るし、割り算も 掛け算の 応用で解くことができます。
算数の基本は (1) 結晶性知能であり、公式を用いた (2) 情報処理機能を (3) 収斂させれば、(5) 自律的段階(実力が 習慣的になること)に入ります。
ところが、英語(言語)は 算数のようにパターン化していません。 それでも 単語や 文法など 要素を覚える段階では (1) 結晶性知能を養うこと(暗記)が ベースとなります。 そして、必須構文を (2) 情報処理機能 の公式として用い、 (4) ワーキングメモリーの瞬時性を用いて 単語と単語を (6) 連合(ある事を目的とした2つ以上のものが一つに組織化すること)させながら、コンテキストを 紡ぎだしていくこと = (7) 修辞法 を用いて、(8) 流動性知能に昇華させるのが 英会話であると思います。
まとめ: (算数を例に)一般的な学校的勉強法と、英会話の違い
算数: (1) 結晶性知能 を基本に (4) ワーキングメモリー + (2) 情報処理機能 で (3) 収斂(収束的思考)させる
英会話: 暗記した (1) 結晶性知能 を (4) ワーキングメモリー + (2) 情報処理機能 を使って、(3) 収斂(収束的思考)させる。 このアプローチは 学校の英語学習の基本であると思います。(英検1級、TOEIC 990を最終目標とするのであれば、ここまでで大丈夫です)
英会話の操作能力習得には その先がある
さらに 英会話では (5) 自律的段階に入るまで (6) 連合(拡散的思考)させる。 修辞法(ニュアンス)を用いて 流動性知能に昇華 させる。 この段階で、各受講者様の英語に個性が出る。
私たち日本人も 日本語で 使用する語彙範囲が異なったり、知性や ユーモアも 英語に反映されるようになります。
センター試験や TOEIC ではよいスコアを獲得できるのに、英会話が苦手な人は、結晶性知能の 情報処理が得意なのだと 思います。
ただ 英会話は その先の 自律的段階 – 連合 – 流動性知能 への昇華 という次のステップがあるように思えます。
その他、英会話には ワーキングメモリー を鍛えるという 小脳的運動も欠かせません。
簡単に 答えの出る事ではありませんが、こうやって 脳のはたらき に沿って、英会話プログラムを作成していく – 思考錯誤を重ねながら – それが MPE の基本的なプログラミング手法です。