プロトタイプ理論を 応用した 英単語のボキャブラリー・ビルドアップ
はじめに: 「理解」とは 情報のつなげ合わせ
理解する という言葉は 脳科学では すでに知っている 情報とつなげ合わせることを言います。
私たちは 連想結合法(覚えたいことを、連想で関連づけて覚えていく手法)を、日常的に利用して暗記作業を行なっています。
また 漢字の読み方を 間違って覚えてしまうような場合、記憶結合エラー(memory conjunction error)が発生し、新しい情報を 誤った形で 既知の情報とつなげていると言えます。
新しい英単語を覚える時:
1. 記銘 (情報を覚えこむこと。符号化とも言う。)
2. 保持(貯蔵 – 既知の情報と ひと固まり にして 覚える)
3. 想起
という3段階を経て 記憶を維持・安定させます。
つまり 深い理解とは 情報の量よりも むしろ 知っている複数の関連 情報同士のつながり(複数の関連情報が 頭の中で ひと固まり になっている状態)具合を、深い理解 という言葉に、 私たちは 日常生活で 置き換えて 使っているのだと思います。
記憶した情報は カテゴリー化されて 脳に保管される
複数の関連情報(成員)が 頭の中で ひと固まり(カテゴリー) になっている状態を カテゴリー化(グループ化)と言います。
カテゴリー化の一例: ミカン – リンゴ – ブドウ
一般的な果物の名詞(要素・メンバー)ですが、こうやってカテゴリー化(グループ化)すると 脳は それぞれの単語(要素・メンバー)を記憶しやすい、また 記憶を想起しやすい と考えてください。
これを (古典的)カテゴリー理論 と言います。
引用: Allan, Keith. A history of semantics. In Nick Riemer (ed.), The Routledge Handbook of Semantics. Abingdon, Oxon: Routledge, 2016
プロトタイプ理論の基本
In this prototype theory, any given concept in any given language has a real world example that best represents this concept. For example: when asked to give an example of the concept furniture, a couch is more frequently cited than, say, a wardrobe. Prototype theory has also been applied in linguistics, as part of the mapping from phonological structure to semantics.
In formulating prototype theory, Rosch drew in part from previous insights in particular the formulation of a category model based on family resemblance by Wittgenstein (1953), and by Roger Brown’s How shall a thing be called? (1958). 引用: wikipedia
その情報の 主要成員(要因・メンバー)を 認知言語学の世界では プロトタイプと呼んでいます。
そして 現代のプロトタイプ理論 では、カテゴリー内(知っている関連情報の ひと固まり)の プロトタイプは、個人の 主観によって 大きく異なると 言われています。
例) 焼き鳥 と聞くと カラオケ と 思い出す人が いても不思議ではないですが、焼き鳥と聞いて すぐカラオケと 想起する人は 少ない。 さらに カラオケと言えば 焼き鳥 と すぐに 連想する人は ほとんどいないでしょう。
カテゴリー: 焼き鳥 – 刺身 – 唐揚げ (居酒屋の定番メニュー)
プロトタイプ: 焼き鳥 – ワインのテスティング – カラオケ (個人的な行動パターン)
先ほど カテゴリー化の例として ミカン – リンゴ – ブドウ を挙げました。
ミカン – リンゴ – ブドウ には 果物である という 共通する性質が存在します。
ただ、リンゴの栽培について 話しをする時は:
リンゴ – 腐葉土 – 殺虫剤 – 収穫 などと 果物とは 別の カテゴリー の単語(メンバー)を用いて リンゴについて 話しを進めます。
ここでは 果物と比べ 共通する性質(各々の単語の共通性)は 曖昧になります。
カテゴリー化は 各単語の 共通性が 明確な集合 ⇒ 情報処理化 しやすい
プロトタイプは (リンゴの栽培のように)単語の共通性が 曖昧である ⇒ 主観に基づく
プロトタイプ理論を 使った カテゴリーの一例
プロトタイプ理論を 用いて、英会話 の際に トピックスに合わせて使用する 英単語を 見てみましょう。
下記1例は 日常英会話で 洗濯の際のトラブルを 生徒様に英語で語ってもらった際の アウトプットを参考に 英単語を リストにしてみました。
* 赤字の英単語は 受講者様が 知らなかった・思いつかなかった 語彙です。
* 受講者様は TOEIC 800、英検準1級、海外在住経験無しの方。 ビジネスで主に英語を使用。 日常英会話を話す機会はあまりありません。
洗濯の際のトラブル の不具合についての英語での 説明
(1-1) 基本的な名詞
washing machine – tumble dryer – dry cleaner
send clothes to the dry cleaner が 言えませんでしたが、基本的には 通じる英語表現でした。
(1-2) 細かい名詞
large load – hamper basket – cloth pin
自分では 思いつきませんでしたが、講師が使った時は 聞き取っていました
(2-1) 基本的な動詞
wash – rinse – soak
問題なく 使えていました
(2-2) 動作を表す動詞
wind: the material wound too tightly
knot: washing machine twisted up the clothes into a knotted mess
yank: yanked and jerked the stuck items
動作を表す動詞が ほとんど使えませんでした
(2-3) 動作を表す 前置詞・句動詞
pull outward: pull the dial outward to start the machine
pop off: the lid pop off
sit in: let my clothes sit in the washing machine
使用法だけでなく Linked Sounds の聞き取り も 難しいと感じていたようです。 普段は remove, break, remain など 基本動詞に置き換えて話しているとの事です
(3-1) 特定の話題(ここでは洗濯)以外では 使用する頻度の低い 単語
dye transfer – bleed (= run) – color-fast
自分では 思いつきませんでしたが 言われてみて納得 されていました
あくまで ラフな テストの結果ですが、日本人は 動詞の使い方、特に 動作を細かく 表現する動作表現が 苦手な人が 多い – そのヒントになるのではないかと思います。
コンテキストに沿った 動詞の 流れが大切
英語のセンテンスで、動詞は 根幹。 その他の 単語は 枝葉 と捉えます。
根幹さえしっかりしていれば 枝葉は 自然に想起されます。
例) cook – eat – wash
3つの動詞だけで 一連の 事象が分かります。
大切な事は 単語を カテゴリー化する時、意図的に 動詞もカテゴリーの中に 入れることです。
プロトタイプ理論を 用いた ボキャブラリー・ビルドアップでは、意識的に 動作を表す動詞を 用いる カテゴリーを加えてみましょう。
例) 初心者の方であれば、駅での切符の買い方。 中級者以上の方であれば、剣玉や コマの回し方を トピックにすると、指先や玩具の細かい動きに関する 英語表現レベルがチェックできます。
名詞(形容詞)をカテゴリーかするのは 比較的簡単です。
それに対し、動詞を カテゴリー化しようとすると (各々の動詞の共通性よりも、時系列でカテゴリー化されるため)無理が生じやすいです。
名詞のカテゴリーを 横串と考え、それに 動詞グループの 縦串を入れる。
そうすることによって 英語操作能力に 安定性が 加わるものと思います。
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